誕生日なのに、1人で家にいる空間は、いつも以上に寂しかったから。

だから、家にいたくなくて少しでも時間稼ぎ程度に遠い方のコンビニを選んだのだ。

さっきまでは、自分自身のことなんかどうでもよくて、もしかしたら危ない目に遭っていたかもしれなかったという発想は、全く頭になかった。


「……っ、しんちゃん、せんぱい…」


人恋しくなっているからなのか、久しぶりに先輩に会えて嬉しいからなのかはわからないけど、安心しきった自分がいる。

恐る恐る手を伸ばし、とても弱い力で先輩の服の裾を掴むと、思わず本音がポロッと口に出てしまっていた。



「あいたかったです」



声が震えていた。

声だけじゃなくて、手も震えていて、その手を先輩は両手で優しく包み込んでくれた。

先輩は、唇を少しだけ動かし、微笑みながらこう言った。



「おれも、会いたかった」