あなたの笑顔が好きだから。


「……あっ、すみませ──…」

「いってぇなコラァ…。どこ見て歩いたんだぁ、おぉん…??」


焼酎くさい声が頭上に降ってくる。

顔を上げると、酒の酔いで顔を真っ赤に染めた30代くらいの男性が眉を顰めて見下ろしていた。

酔っ払いだ。

しかも、だいぶ酔いが回っているタイプの人だ。

男性は、呂律の回っていない声で話しかけてくる。


「いってぇじゃねえかぁ、コラァ…」

「ご、ごめんなさい」

「あぁ〜?ごめんなしゃいだぁ〜…??」


私の態度が気に入らなかったのか、男の人は、頭のてっぺんから爪先まで舐め回すようにこちらに視線を這わせる。


「……おじょーちゃん、家出かぁ?」

「い、いえ、ちがいます」

「ほお〜ん、そうかぁ…。としはいくつだぁ?」

「16です。今日で16歳になりました」

「マジでかぁ、今日で16かぁ。若いなぁ〜」

「そうなんです。今日、私の誕生日なんです」

「おぉ、そりゃあ、めでてえなぁ〜」

「祝ってください」


初対面の分際でそう言うと、男の人は「おめでとさん」と返してくれた。