「あっ、お母さん、今どこにいるの?まだ最寄り駅にも着いてない感じだよね?」
《……》
「お母さん?」
黙り込むお母さんに、首を傾げる。
なんだか申し訳ない表情をしているような気配が、電話口から伝わってくる。
《芽依、ごめんね》
「……えっ?」
《今日、早く帰ってくるって連絡したんだけど、撮影がだいぶ押してて、今日中には帰れそうにないの》
「……あっ。そう、なんだ」
お母さんは《本当にごめんね》と再度謝った。
《何時に帰ってこれるかはわからないんだけど、早くて明日の昼くらいには帰れると思うの。だから──…》
「うん、大丈夫だよ。お仕事がんばってね!」
明るく笑顔でそう言って、電話を切った。
耳から離した受話器を元の場所に戻す。
先程まで昂っていた気持ちが一瞬でどんよりとした気分になる。
「……」
まあ、仕事だし、仕方ないよね。
お母さんが毎日お仕事頑張ってくれているから、生活できているからこそであって、私は文句を言う立場ではないのであって。
でも、今日は私の誕生日だよ…?
今日中に帰ってこれないとか、誕生日終わっちゃうじゃん。



