「あっ、萩ちゃんおはよ〜」

「!?」


朝、瑠璃ちゃんたちと喋りながら生徒玄関に着くと、ちょうど前を通り過ぎようとした真ちゃん先輩がわざわざ私に挨拶をしてくれた。


「あっ…お、おひゃっ、おお、おっす!!」

「んはは!『おっす』て!どっかの応援団?」


可笑しそうに笑う先輩を前に私は顔を真っ赤にさせて、「違います…」と否定した。


「そんじゃ、おれ行くね〜」


真ちゃん先輩は笑顔で手を振って、颯爽とその場を去って行く。


わ、わぁぁ〜〜っ!!

うっとりと先輩の後ろ姿に見惚れて、朝から幸せな気分になった。

向こうから話しかけてくれた。

『おはよう』って言ってくれた!

このまま体が宙に浮いてしまうんじゃないかってくらい、ニヤニヤしてしまう。


「待って、あれ深森先輩じゃない?」

「今、芽依のこと『萩ちゃん』って呼んでたよね…」


瑠璃ちゃんと杏子ちゃんが勢いよくこちらに振り返る。


「…芽依、あの先輩といつの間に仲良くなったの?」

「深森先輩と知り合いなの?」

「何であの人『萩ちゃん』って呼んでんの?」

「あの人めっちゃいい匂いしたんだけど!」

「「芽依、詳しく教えな?」」


見事に口を揃えて圧をかけてくる2人に私は「ハ、ハイ…」と、今にも消え入るような声で返事をした。