あなたの笑顔が好きだから。


何も言わない私にイラついたのか、チッと舌打ちをしてリビングを出て行く。

その後、ガチャッと玄関が乱暴に閉まる音が静かに響いた。


「……」


玲太くんがいなくなってからも、私は立ち尽くしたまま、食卓に並べられた料理をぼんやりと見つめる。


──『もういい。勝手にしろよ。俺は慰めてなんかやらねーから』


そう吐き捨てた玲太くんの表情は、悲しそうな、泣きそうな顔をしていたような気がした。

玲太くんがそんな表情をするわけないか。

だって、彼はあまり感情を表に出さない人なのだから。

どっしりと激しい疲労感に襲われるような感覚がして、とても深いため息をつく。


なんかもう、どうでもいいや。

考えたところで私には関係ないし。


何もかも面倒くさくなって、私は目を伏せた。

その拍子に、涙が一滴ゆっくりと流れて、それから机の上にぽつりと落ちた。