何も考えないようにして、目を伏せた時、ピンポーンと、インターホンが鳴った。

テレビモニター付きのインターホンで来訪者を確認すると、玲太くんの姿が映っていた。


「……合鍵は?」

《忘れた》

「……」


ため息混じりに玄関のドアを開けると、玲太くんがひょっこり顔を覗かせて「晩ごはん持ってきた」とタッパーがいくつか入っている手提げのカバンを私に差し出した。










「おまえ、学校サボっただろ」


お皿におかずを盛り付けながら、玲太くんは言う。

夕飯が並べられたテーブルをぼんやり眺める私は「……明日は行く」とぶっきらぼうに答えた。


「今日、深森先輩がうちのクラスに来たんだけど…」


玲太くんの口から出てきた名前に、ピクッと反応する。


「あの人、いきなり俺のこと呼び出して『萩ちゃんと音信不通なんだけど、何か知らない?』って聞かれた。俺が知るわけねーだろって思ったわ」

「……」


俯いていると、玲太くんはちらっと私の方に視線を向ける。

彼が何を言いたいのか、すぐにわかった。