沈黙が流れる。
少々気まずい空気に包まれ、何か話題はないかと考えていると、先輩がゆっくりと口を開いて、「萩ちゃん」と呼んだ。
「…おれじゃ役に立たないかもしんないけど、萩ちゃんがもし悩んでることがあったら、その、おれにも相談してほしいなぁ…なんて……」
「へっ…」
不満げな表情を浮かべる先輩に、ぱちくりと何度か瞬きをする。
もしかして、泣くほどの悩みを抱えているように思われた…??
いや、悩んでいたけども。
しかし、先輩が拗ねた顔をするとは思ってもみなかった。
「……わ、私の話、聞いてくれるんですか…?」
震えた声で恐る恐る問いかけると、先輩は「当たり前じゃん!」と即答してくれた。
「……っ」
この時、この瞬間、私は心の中で決心した───。
「…あ、あの、先輩」
「ん?どしたの?」
小首を傾げて、優しく微笑みかけてくれる仕草でさえも、胸がときめいて、先輩への思いがますます募っていく。
麻弥くんが言っていた、逃げている場合じゃないんだ。
伝えよう。
先輩に気持ちを、"好き"という言葉を。
「明日も、先輩と一緒に帰ってもいいですか…?」
まずは伝えるんだ。
「話したいことが、あります…」
伝えなくちゃ、何も始まらない───…。



