自分でもちゃんとわかっている。
私は自ら何も動けていない上に、気持ちを伝えてすらいない。
『フラれたらフラれたで』って、麻弥くんは簡単に言ったけど、そんな誰しも麻弥くんみたいに考えられないよ。
だって、私、今まで恋愛したことないんだもん。
もし振られたら、きっと私は先輩への気持ちを引きずったまま、生きていく未来が見えるんだもん。
諦めきれないよ。
「ゔぅ〜〜っ…」
我ながら、情けない。
麻弥くんは、私のためを思って厳しいことを言ってくれているのはわかるけど───…やっぱり怖いよ。
"好き"だって、素直に気持ちを伝えるのが、今はものすごく怖い。
「麻弥〜」
不意に、先輩の声がした。
振り向くと、先輩は少し口角を上げ、笑みを浮かべながら私たちを見据えていた。
「あっちゃー…真くん。何しにここへ…?」
「んー?萩ちゃんと一緒に帰る約束してたから、迎えに来たんだけど、おまえと同じクラスの子たちが麻弥と萩ちゃんの2人で教室出て行くところを見たって聞いてさー」
声色は落ち着いているが、麻弥くんを捉える瞳は、どこか怒りのような感情が見える。



