冗談のように話す先輩は、笑っているけれど、なんとなく、少し寂しそうな、何かを諦めているような、そんな表情をしていた。
「萩ちゃんに話したことあったっけ?おれと永遠が幼なじみだってこと」
「あっ…麻弥くんから聞いたことあります…」
真ちゃん先輩と日山先輩が赤ちゃんの頃から一緒に育ってきたということを麻弥くんの口から少しだけ教えてもらったけど、先輩本人から聞くのは、はじめてかもしれない。
ちなみに、麻弥くんは真ちゃん先輩と家が向かい同士で、中学から仲良くなったらしい。
「別に、大した話じゃないんだけど。永遠に10個上の兄ちゃんがいて、その人がものすごく優秀な人でさ。永遠も兄ちゃんみたいに期待されたいって思ったのか、誰もいない所でコツコツ努力するようになって、おれはただその姿を見てることしかできなかったんだよね。それからして、気づいた時には何でもできる完璧な人間になっていて、元々顔が整ってるのもあって、永遠がモテ始めていってさ。あまりの大人気に女の子たちは、永遠と仲を取り持ってほしいって、おれにも頼んでくるようになったんだ〜」
先輩は、どこか遠くを見つめるような眼差しで言葉を紡ぐ。



