館内の薄暗さに目が慣れてきているのか、先輩の表情がはっきりと見える。
しかし、その表情がどういった感情なのか、何を考えているのか読み取れなかった。
それにしても、今の言葉は一体どういう意味だったのだろう。
私に向かって言う必要はあったのだろうか。
何かリアクションをするべきだったのだろうか。
どうしよう、全くわからない。
思い返してみれば、先輩とは、初めて話した時から飄々としていて、優しいけど、どこか捉え所のない印象があった。
最近麻弥くんから聞いたのは、『真くんは、照れると耳が真っ赤になるタイプなんだぜ』と言っていた。
また、よっぽど嬉しかったり、恥ずかしがっている場合、ほっぺたを真っ赤っかにさせるらしい。
麻弥くんの情報によると、先輩が顔を赤らめるのは、"レア"であるということだそうだ。
何度か先輩のそんな姿を見かけたことはあるが、正直、何に対して照れていたのかは不明だし、逆に緊張しすぎてあまり覚えていない。
なんとなく思い出せるのは、先輩と一緒にぶどうゼリーを食べた日と、あとは───…。



