あなたの笑顔が好きだから。


会計を済まし、喫茶店を出て2階のフロアに移動する。

そして、大水槽の前にいくつか設置されているレザーベンチに座って、ゆっくりくつろぎながら泳いでいる魚たちをぼんやりと眺めることにした。


「萩ちゃん、足大丈夫?サンダルで歩き回ってたから疲れたでしょ」

「あっ、へ、平気です。念のために、絆創膏貼ってきたので…!」

「おぉっ、装備もバッチリだね〜」


先輩は、視線を私から水槽へと移して、「いやぁ、あれだね…」と声に出す。


「今日は楽しかったね〜」

「はい…。私も、楽しかったです…」

「また、こうやって2人でお出かけしようね」

「えっ、あっ、はいっ…!」


"また"という言葉を聞いて、先輩と出かける日は今日だけではなく、次があることを前提に話してくれているのだと理解し、口角がゆるみそうになった。


「おれさ、女の子と2人きりでどこかに出かけるの初めてなんだよね」

「……えぇっ!?そ、そうなんですか!?」

「そだよ〜」


意外すぎて、驚いた。

杏子ちゃんたちからの話を聞く限り、先輩は毎日色んな女の子を連れ歩いて遊びまくっているイメージがあった。

きっと、私もその内の1人にすぎないのだと思っていたのだが───…。