先輩はきょどる私の顔を真剣な瞳でじーっ…と見つめてくる。
笑った表情も素敵だけど、真面目な顔もすごくかっこいい…。
ほんのり頬が熱くなって彼を見つめ返していると、先輩は「…うん、やっぱり」と、確信を持ったような声を出す。
「きみさ、1ヶ月前くらいに駅前で不良に絡まれてた子だよね?」
「へっ…」
ご本人の口から予想もしていなかった発言を投下されて、思わず石像のように固まってしまう。
今は5月半ば頃。
私と先輩が初めて出会ったのは、高校に入学して、まだ1週間くらいの時だ。
きっと、私のことなんて忘れていると思っていたのに───…まさか、覚えてくれていたなんて…。
ぶわぁっ…と一気に体中が熱くなってきて、胸もいっぱいになっていく。
今日はもう最高の日かもしれない。
"大袈裟"だとか思われるかもしれないけど、私にとっては幸せな1日だ。
「あの…せ、先輩…っ!」
───勇気を出すんだ。
「ん?」
優しい眼差しで首を傾げる仕草だけでも、きゅんっ…と、胸がときめく。
自分の心臓の音がより鮮明に聞こえた。



