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全速力で走った私は壁に手をつき、一旦深呼吸をしながら息を整える。
…やばい、やばいよ。
あの先輩と喋っちゃった!
先輩が私に話しかけてくれた!
嬉しすぎる。
今日は先輩と話せた(?)記念日だ。
しかし、私は肝心なことを伝えられていない。
あの日、助けてもらった時は色々な意味で混乱していたから、適当にお礼を言ってしまったような気がしていた。
だから、もう一度会って、再度『ありがとうございました』って、言おうと決めてたのに。
でも、その本人が同じ学校で急に目の前に現れるとは想定外だった。
先程、素っ気ない態度をとってしまったから絶対無愛想なやつだと思われたかもしれない。
わーっ!やだやだ、最悪だ!!
「おっ、いたいた。そこの1年生ちゃん」
「…はい、なんで───…ひょわっ!?」
肩を叩かれ、咄嗟に振り返ると、さっきのシンシン先輩が笑顔で私を見ている。
「ななななんっ…そんっ…何でしょう、か……」
ものすごい勢いで心臓が高鳴り始めて、口も上手く回らない。
こんなすぐ話せるとは思わなかったため、ついつい挙動不審になってしまう。
これは私の悪い癖だ。



