「……あのさ、萩ちゃん」
「はい、何で──…あっ、すみません。ちょっと電話に出ますね」
タイミングが悪いことに、萩ちゃんのスマホに誰かが電話をかけてきた。
ムッとしながら彼女のスマホを見ていると、「もしもし、玲太くん?」と、聞きたくもない名前が耳に入ってくる。
「今、ショッピングセンターにいる。……あぁ、晩ごはんの作り置きなら冷蔵庫に入れておいて。玲太くん、合鍵持ってるでしょ?」
"ばんごはん"、"あいかぎ"
2つの単語を聞いて、精神的に大きなダメージを受けた。
萩ちゃんも慣れたような素振りで話しているから、やはり、2人はそういう関係なのだろうか。
「……萩ちゃん」
「? はい」
電話を切った萩ちゃんは、スマホを鞄にしまいながら返事をする。
彼女が顔を上げた拍子に、ばっちりと目があった。
───"本人に聞いてみなければわからない"。
まさにその通りである。
勝手に決めつけて、勝手に落ち込んでいたって、何も変わらない。
「萩ちゃんとりょうたくんって、付き合ってんの?」
───どんな回答が返ってきたとしても、しっかりと受け止めるんだ。



