あなたの笑顔が好きだから。



───元気よく手を挙げ、素直に返事をしたのも束の間のことだった。







「〜〜っ、……あんっっっのバカタレ…ッ!!どこいきやがった…!?」


おもちゃ売り場へと足を運び、悠が欲しいと言っていたおもちゃを持って会計している隙に、悠はいつの間にか姿を消していた。


これだから、子どもは苦手だ。

鼻水を垂らしたまま抱きついてくるし、食べ物の好き嫌いは多いし、時によって体力は無尽蔵にあるし。

小さい子どもと関わるといつも急激な速度で体力が削られていくような気がする。


「はぁ〜…っ」


ため息をしただけでも疲労感が増した気がする。



「あっ、深森先輩」



不意に、後ろから誰かがおれを呼ぶ声がした。

振り向くと、できれば会いたくなかった人物がじ…っとおれを見据えて立っている。


「あー…えっと、りょうたくん、だっけ……」


萩ちゃんの彼氏かもしれない男が何故こんなところにいるのだろう。

正直、この男とこうしてばったりと遭遇したくなかった。

あぁ、早く帰りたい。

非常に気まずい雰囲気に包まれて、心の中で何度目かわからないため息をつくと、「…あの」と、りょうたくんが視線を下に向けながら話しかけてきた。