「『勝ち目がない』ってなに?何の話してんの?」
「何の話って…。萩ちゃんに彼氏がいるって話だよ」
「んん…???」
どういうことだ、と言いたげな表情をする麻弥を無視して、深いため息をついた。
……思い出しただけで、何もかも嫌になってきた。
もう寝よう。
いっそのこと、眠って全部忘れてしまえばいいんだ。
「……真くんさあ、それ本人に聞いたの?」
「……なに、おれ今から寝るんだけど」
「芽依がりょーたろすと付き合ってるって言ってたの?」
「……言ってなかった…と、思う…」
あれっ、言ってたっけ。
"彼氏"とは言ってなかったような、そうでなかったような…。
"りょうたくん"と初めて対面した時、内心動揺していたから、なんとなく記憶が曖昧になっている。
「真くん、芽依が真くんに言ってくれてたこと、覚えてる?」
「覚えてるって、何が?」
「芽依がわーちゃんより真くんの方がかっこいいって言ってくれてたっしょ?あの顔面国宝級イケメンの日山永遠を差し置いて、芽依は真くんのこと褒めてくれたんだよ?彼氏がいたら普通、他の男のこと評価すると思うか?もしそうだったら、芽依は相当ヤバい女だぞ。……ってか、本人が言っていないことを、勝手に決めつけるのはよくないんじゃねえの?」
「……じゃあ、萩ちゃんとりょうたくんは付き合っていないってことでいいんかな…?」
「だから、それを本人に聞けって言ってんの」
「教えてくれたっていいじゃん!」
「いや、オレ関係ないし。仮にオレが知ってたとしても、真くんのためになんないじゃんか!」



