「この子、迷子になったみたいなので、館内アナウンスをしていただきたいのですが……」

「そちらのお子様のお名前をお願い致します」

「えっと、名前は──…」

「ひやまゆうです、3さいです」

「……だそうです」


女の人は、メモを取りながら微笑ましそうにゆうくんの方を見た。

その後、アナウンス前に鳴る、ディナーチャイムの音が館内中に響き渡った。


『本日も、ショッピングセンターにお越しいただきまして、誠にありがとうございます。 ご来店のお客様に迷子のお知らせを致します。白のTシャツに黒のズボンと赤色の靴をお召しになった、市内からお越しのひやまゆうくんがサービスカウンターでお連れ様をお待ちです。お心当たりのあるお客様は、1階サービスカウンターまでお越しください。 繰り返し、迷子のお知らせを致します───…』


これで、私の役目は果たせた。

無事、逮捕されずに平穏な人生を送ることができる。

安堵のため息をついて、「じゃあ、私行くね」と歩き出そうとすると、ゆうくんが「まって!!」と、またもや服の裾を掴んできた。


「おねいちゃんもいっしょにおじちゃんまとうよ!」

「……えっ!?」


目が飛び出そうになるくらい、大きな声を出してしまった。


ゆうくんのおじさんを一緒に待つってことは、もしや───…。