あなたの笑顔が好きだから。



「どうして?」

「『いかのおすし』って、知ってる…?」

「しらなーい」

「"いかのおすし"の"いか"で『しらないひとにはついていか(・・)ない』っていう、子どもの防犯標語があってね。だから私は君にとって知らない人なの…」

「"きみ"じゃなくて、ぼくのなまえは"ひやまゆう"だよ」

「そっか、ゆうくんっていうんだね!ごめんね!だからね、ゆうくん──…」


ゆうくんと名乗る男の子は、また私の手を掴んで、そのまま歩き出そうとする。


「ちょっ、ゆうくん…」

「あのね、ぼくのおじちゃんがね、『もし、おじちゃんがまいごになったら、かわいいおねいさんにこえをかけてたすけをもとめなさい』っていってたの!だからおねいちゃん、いっしょにおじちゃんさがそ!」

「えぇ……っ」


ゆうくんにぐいぐい引っ張られ、バランスを崩した拍子に立ち上がってしまう。

結局、おじさんらしき人を探すために、ゆうくんと共に行動することになった。


大丈夫かな、通報されないかな…。


挙動不審になりながらキョロキョロと周りに目を向ける。