……なんだろう、この状況。
この子は誰なんだろう。
何で私はこの子に"ミオチャン"なんて呼ばれたのだろう。
あと、何でこの子は1人でショッピングセンターにいるのだろう。
次々と疑問が湧いてきて、とりあえず男の子と同じ目線になるよう、その場にしゃがみ込んだ。
「……あの、ごめん。手、離してほしいな…」
「じゃあ、おててつないで!」
「えっ、それはちょっと……」
これは、絵面的にまずいのでは…?
初対面の男児(たぶん4歳くらいの子ども)と手を繋いで歩くなんて、側から見れば誘拐だ。
タイトル:『女子高生 幼児誘拐の疑いで逮捕』
萩野芽依容疑者(当時15歳)、ショッピングセンターで迷子になっている男児と手を繋いでどこかへ連れて行こうとしている所を警備員が目撃し、2人の様子が不審に感じた警備員は、そのまま警察に通報。
警察の取り調べに対して、「わざとじゃないんです」と萩野容疑者は語る。
───…みたいなことをネットニュースや新聞に載り、私は高校を退学し、家も職も全て失い、人生が真っ暗となる。
そんな恐ろしい想像をしてしまい、サーッと血の気が引いて、「オテテハツナゲナイ…」とカタコトになりながら断った。



