「……いって」
ぼーっとしながら歩いていた数分前の自分を呪いたかった。
「マジでいって〜。これゼッタイ骨折したわ〜」
派手な髪色に着崩された学ラン。
「痛い〜」と、わざとらしい口調で腕を押さえる男と左右に立っている友人らしき男2人。
3人ともニヤニヤ私を見下ろしていて、気味が悪い。
「うーわっ、かわいそ〜」
「これは治療費払ってもらわなきゃだな〜」
彼らはいわゆるチンピラというものだろう。
自分よりも立場の弱い人間を見下して、酷い目に遭わしたり、金をもぎ取っているような最低最悪な人たち。
「おねーさーん。オレの腕、骨折れちゃったんだけど〜…今お金持ってる〜?」
誰でもわかる、明らかな嘘に嫌気がさす。
「…ごめん、なさい。今、お金持ってません……」
「えー、マジで〜?んじゃあ、金ないなら体で払ってもらおっかな〜!」
突然腕を掴まれ、ゾクッと鳥肌が立った。
しかも腕が折れたと言っている方の手で掴んで強制的に私を歩かせようと引っ張ってくる。
「おいおい、やめてやれよ。この子めっちゃ怖がってんじゃん(笑)」
「ほんとだ、かわいそうに〜」
2人の男が笑いながら同情のような言葉をかけてきた。