それより何より、やよいのが目を逸らさずにいる理由を探りたい衝動も、反応を見るのが楽しいと思った理由も今でははっきり分かって、それだけで胸が一杯だった。

「あ、雨上がったんちゃう??」

やよいの声につられて空を見上げると、すっかり雨はあがっていた。
相変わらずどんよりと重い雲はかかっているが、戻るなら今がチャンスといったところ。

「じゃあ戻ろうか」

二人で並んで林を出る。
まるで信じがたい時間だった。
こんな展開になるとは、日下部があの場から離れたときは想像も出来なかった事だ。
少し近付けた気がして嬉しい。
だが勘違いしてはいけない。
日下部にとってこれは特別なんでもないこと。
雨宿りの間の退屈しのぎ程度だ、深い意味はない。
うきうきしてしまいそうになってしまったやよいはそう言い聞かせ、これ以上恋心を膨らませないよう気持ちを引き締めた。

「日下部くん手伝ってないから白米だけかもしれんね」

「バナナ食べたから大丈夫」

「ないわぁ」

そんなジョークを飛ばしながら、二人は来た道をゆっくり戻っていった。