ゆっくり、話そうか。

さっきまでは嫌々でも過去の事だからと思って答えてきたが、だんだんイライラしてきた。

「日下部くんは人の気持ちを軽く見すぎるとこあるから、心えぐられる」

小さく小さく縮こまり、今まで浴びせられた何気ない一言に傷付く自分を抱き締めた。

「まぁ、俺性格よくないしね」

何となく知ってます。

「けどわざとちゃうんやから次からやめてもらえたら」

無意識にやってしまうことについては、今のやよいに日下部は責められない。
自分だってまだそれを制御中なのだがら。
なのでなるべく可能なら、気を付けてもらえればというつもりで言ったのだが───

「いや、わざとだよ」

まさか意図的にやっていました発言が出てくるとは思わず、一瞬頭が真っ白になる。
気を付けるよ、と想像していた答えに対する自分の反応しか考えていなかったため、頭がついていかないということ以前に言われたこと自体が理解できなかった。


は、
今、何?
何て言うた?

「園村さんの反応がおかしくてつい」

つい?

クスクス笑う日下部の笑い声でようやく意味を理解したやよいが、勢いよく立ち上がり「はぁぁぁっ!?」と怒り声を放った。
二人しかいない林の中を、やよいの怒声が響き渡る。
やよいの声に驚いたのか、どこかに止まっていた鳥が羽ばたいていった。

おおぉ、
すごい声量。

空を見上げ、飛んでいった鳥を確かめようと上を向くと、仁王立ちして日下部を見下ろすやよいと目があった。 
すごい形相である。
何かをこらえるように両手を握りしめ、眉を寄せたやよいの表情は、明らかに傷付いていた。