ゆっくり、話そうか。

勢い余って葉っぱを粉々にするのではないかと思えるくらいだ。
しかしほどよく木々が重なりあっているため、音と勢いほども二人には襲ってこない。
無傷とまではいかないでも、多少濡れるといった程度。
遠くに見える道路は、雨のせいで道なのか何なのか分からなくなっていた。

「とりあえずあそこで雨宿りしようか」

日下部が示したのはさっき寄りかかっていた背の高い樹。
上を見ると広く枝を広げていて、少々の雨なら避難できそうなくらいに葉っぱが生い茂っていた。
天然の傘といった具合。
二人で移動し、その場に座り直す。
雨の影響で土の香りが一層増している。

「なんでそんなとこ座るの?」

やよいが座ったのは日下部の隣ではなく、樹を挟んだ真後ろ。
背中合わせ。

「自分の事木っ端微塵に二回もフッた相手と並んで座れるほど、男前ではないんで」

なるべく卑屈っぽくならないように心がけたつもりだが、どうだろうか。
日下部と話をするとそんなことがいちいち気になってしまう。

「ここまで一人で探しに来てくれたのに?」

「それは体力的な男前やん、こういうのは女の部分やからまた違う話やわ」

何より必死だった。
いるはずなのにいないというのはどうにも落ち着かない。
相手が自分にとってどういう位置付けであったとしても、体力的男前は発揮してしまう。