ゆっくり、話そうか。

ざまぁみろだ。
これからしばらくあいつは、キャンプでうんこと言われ事あるごとにからかわれるはずだ。

それくらいされても文句は言えまい。
いい気味だと思った。

けれど、心の底からはいい気味なんて思えず、そんなのはただの嫌がらせにすぎないと思い直す。
確かにあんなにはっきり言われてしまえば傷付きはするが、それは日下部の自由だ。
嫌なものは嫌だという権利はある。
言い方が酷くとも、誰にも責めることはできない。
自分が傷付いたからといって傷付けた側を完全に悪いと責めることも間違っている。
気持ちを口にしただけなのだから。
日下部にはやよいと付き合うつもりはない…。
どこに悪者の要素があるのだろうか。

一連の出来事は犬に噛まれたものとして処理しようと、包丁を手にしたやよいはジャガイモの皮を剥き始めた。

「それにしてもさ、遅くね?日下部のやつ」

米を火にかけ鍋もぐつぐつ音をたて始めた頃合いで、うんこと聞かされていた男子生徒が姿の見えない日下部の存在に再び気付いた。
そう言えば帰りが遅い。
集中して調理に取り組んでいたやよいは、ポケットにしまっていたスマホで時間を確認した。
1時間は経っている。

「電話してみたら?」

万智が尚太に電話をかける仕草を見せて促した。

「俺あいつの知らないんだよ。連絡うるさそうだから教えないとか言って」

「あ、俺も。毎日学校であうのに必要ないって言われた」

日下部らしいといえばらしい言い方。
だが引っ掛かる。
友達なのに誰も知らないとはどういうことなんだろう。