ゆっくり、話そうか。

なにか悪いことをしたか。
なにもしていないのになんでこんな目に遭わされる?

激しく脈打ち、足元まで血の気が引いていくのが分かる。
人前だから立っていられる。
一人だったらとっくに倒れていたかもしれない。
こんなショック、ちょっとない。

「だって、やよい、震えてる…」

言われて初めて気付く。
両手が小刻みに震えて、足もがくがくしていた。
血の気が引いたせいだ。
吐きそうで吐けないときのあの胸の悪さも加わっている。
 
「寒いねん。動かんと寒いから、ご飯作ろ?」

言いたいことを言って逃げた日下部が憎らしい。
逃げれるものなら逃げたかった。
先にやられてしまっては後に残されたものは身動き取れなくなる。
特にこういうチームで動いているときは、残りの人数を考えると抜けるに抜け出せない。

「次やったらぶっ飛ばす」

万智に叱られてしょんもりしている尚太に冗談二割の本気をぶつけた。
びくっとなった尚太は顔をひきつらせ、「りょ、りょうかい」とポーズを作る。
そのあと万智にさんざん叱られたことはおまけだ。
しばらくして戻った米研ぎ組に日下部不在の理由を訊かれ、しどろもどろになって「うんこ」と答えた尚太に拍手を送った。