「どうだった? 食事は」

「どの料理もおいしかったです。あの、今日もごちそうしていただいてしまい、すみません。ありがとうございました」

 話をしながら駐車場へ向かいながらお礼を言うと、誠吾さんはポンと私の頭を撫でた。

「凪咲においしい料理を食べさせたくて誘ったんだ。お礼を言うのはこっち。久しぶりに女将にも挨拶できたし、付き合ってくれてありがとう。またふたりで来よう」

 その言葉に深い意味はない。でも女将はまた誠吾さんが私を連れてきたら勘違いしてしまうのでは?

「いいえ、ここにはもう誠吾さんと来ることはできません」

「え?」

 私の話を聞き、誠吾さんは足を止めた。

 女将に言われた手前思わず言ってしまったけれど、いい機会だ。

 私も足を止めて彼を見つめる。

「偶然再会し、気にかけてくれるのはありがたいのですが、契約結婚の対価はもう十分すぎるほどいただきました。私はもう大丈夫です。なので、こうやってふたりで会うのは止めましょう」

 それがお互いのためでもある。誠吾さんには祖父の願い通り幸せになってほしい。その相手は私ではないもの。