契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない

「ちゃんと二十歳の大学生に見えるかな?」

 コンビニのドアガラスに映る自分の姿をまじまじと見つめてしまう。

 もともと身長は一六五センチと高いほうだけれど、大人っぽく見せるために三センチのヒールの靴を履いてきた。

 黒のロングヘアはハーフアップにまとめ、色白の肌にメイクを施して二重の目をさらに強調するようにマスカラにアイシャドウを付けている。

 服もオフホワイトのブラウスにイエローのフレアスカートを合わせてみた。これなら高校生に見えないよね?

 髪も乱れていないことを確認して、いざ待ち合わせ場所へと向かう。

 これから私は見知らぬ男性とデートをする。食事に付き合うだけで三万円もらえるという高額アルバイトに目が眩んで応募してしまった。

 だけど多くの人が利用しているサイトみたいだし、危険なことはないよね。規約にも食事のみだってしっかり記載されていたし。

 母には友達の家で勉強してそのままご飯をごちそうになってくるって言ってある。

 ただ食事をするだけで三万円稼げるなら、回数を重ねれば短期間で多くの金額を稼げる。それで借金を返して母には一刻も早く父と離婚して、新たな人生を歩んでほしい。

 待ち合わせは改札口にある石像の前。多くの人が行き交う中、メッセ―ジで自分の服装や髪型といった特徴を送る。
 そして約束の五分前、ひとりの中年男性が声をかけてきた。