契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない

「珈琲をお願いします」

「かしこまりました」

 揺れる機内でひとりひとりのお客様に提供していく。

「ねぇ、なんであの人は先にドリンクをもらえているのかな?」

「本当だ。CAさんたちが順番に回ってくれているのに」

 ひそひそと話すお客様の視線の先を辿ると、金城さんが対応していた。

「お待たせいたしました」

「ありがとう」

 金城さんが渡したのはグラスワイン。それはエコノミークラスでは提供されていないものだ。

「あれ? ワインなんてなかったよね?」

「別料金で頼んだとかじゃない?」

「なるほど」

 お客様たちの間で納得いただけてホッと胸を撫で下ろす。

 でも不思議に思っているのは、このお客様だけではないはず。別料金でのドリンクの提供は行っていない。きっといつもファーストクラスに搭乗されているお客様を思っての金城さんのサービスだと思うけど、ここでそれをしてもいいのだろうか? チーフパーサーは了承している?

 疑問に思っても今はドリンクサービス中で聞くことが叶わない。どう答えるのが正解なのかわからないから、お客様に直接聞かれなければいいんだけど。

 不安を抱きながらもサービスを続ける中、聞いてくるお客様はいなかった。