契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない

 全身で重力を感じて身体が宙に浮くような、なんとも言えぬ感覚は何度経験しても高揚感に駆られる。

 高度を上げて雲の中を突き進み、そして青い空に出ると、目の前の窓側の席に座っている五歳くらいの女の子は目を輝かせた。

「ママ見て! 綺麗な空だよ」

「そうね」

 懐かしいな、私も初めて飛行機に乗ったのはあの女の子くらいの時で同じ反応をした気がする。

 何年経っても初めて飛行機に乗った日のことを忘れたくないな。いつまでもワクワクした気持ちを失わずに仕事を続けることができたら、これ以上幸せなことなんてないもの。

 飛行機が徐々に水平に飛行をはじめ、シートベルト着用サインが消灯すると私たちCAはすぐに席を立ち、機内サービスの準備に取りかかる。

「鮎川さん、ドリンクお願い」

「わかりました」

 エコノミークラスで提供するドリンクは珈琲や緑茶、コーラにオレンジジュースなど。ファーストクラスになると、アルコールも追加されとても充実している。

 とはいえ、エコノミークラスでも数種類提供しており、それらをワゴンに乗せて提供するのは大変だ。