契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない

「無事にフライトを終えられたらいいんだけどな」

 小さなため息をひとつ零し、残りのご飯を食べて業務に戻った。

「悪天候によってほとんどの羽田便が欠航したこともあって本日は満席です。しかしいつものようにすべてのお客様に満足いただけるようなサービスを提供できるように、クルー一丸となって頑張りましょう」

「はい!」

 フライト前のブリーフィングの最後に言われたチーフパーサーの一言に、身が引き締まる。

 午後になって天候が回復したけれど、明日からはまた嵐になると予報が出ている。今日のうちに東京に向かいたい人たちでどの便も満席だった。

 こういう時にお客様からクレームが入ることが多い。その大半が私たちCAが提供するサービスについてだ。

 時には理不尽なクレームを言われることもあるけれど、その度にチーフパーサーをはじめ、先輩たちは毅然とした態度で対応している。

 研修期間中に様々なパターンを想定して勉強したけど、実際にクレームを受けたことはなく、実践で対処したこともない。

 でもいずれは経験するはず。きっと避けては通れない道。その時がきたら狼狽えることなく先輩たちのように穏便に解決できるよう経験を積んでいこうと思う。

「鮎川さん、新聞の確認は大丈夫?」

 声をかけてきたのは金城さんで一気に緊張がはしる。