契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない

「どういうことですか? 奥さんはいないって」

「それも含めてゆっくり食事をしながら話すよ」

 そんな……っ! すごく気になるんですけど。

 しかし車に乗ってからも、何度も誠吾さんに聞いても答えてはくれなかった。


「デザートまで完食してくれたところを見ると、凪咲の口に合ったようだな」

「はい、すっごくおいしかったです」

 店に到着後も早く事の真相を知りたくてたまらなかったというのに、次々と運ばれてくる料理がどれもおいしくて、途中から料理に夢中になり最後のドルチェのティラミスまで食べてしまった。

 私を見て満足げに笑う誠吾さんに居心地が悪くなり、ナプキンで口を拭きながら咳払いをする。

「料理もいただきましたし、そろそろお話を聞かせてもらってもいいですか?」

「あぁ、そうだな」

 珈琲を飲むと、誠吾さんは指輪をそっと撫でた。

「結婚するまではなにかと女性に囲まれて、時には度を超す言動に出る女性もいて対応に困っていたんだ」

 その様子が容易に想像できて、返す言葉が出てこない。