契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない

「なんですか?」

「見て」

「どうしてですか?」

「いいから」

 無理やり誠吾さんは私に結婚指輪を握らせた。

 なぜ私に結婚指輪を見せたいの? 夫婦の結婚指輪を見たって、どう反応すればいいのか……。

 とはいえ、渡された以上見ないわけにはいかない。
 遠目でしか見たことがなかった彼の指輪をまじまじと見る。

 あれ? これって……。

 見覚えのあるデザイン。内側を見ると、SとNとイニシャルが彫られていた。

 思わず彼を見つめると、目が合った瞬間に誠吾さんは眉尻を下げた。

「もしかして凪咲はもう結婚指輪を処分した?」

「いいえ、処分なんてしていません」

 たった三ヶ月間だけつけていた結婚指輪は、今も大切にしまってある。時々手にとっては誠吾さんのことを思い出したり、試験など大きな出来事の前に指輪を握りしめてはうまく事が進むよう、祈ったりもしていた。

 お守りのように大切にしている指輪を処分するわけがないじゃない。
 すると誠吾さんはホッとした顔を見せた。

「それならよかった」

 私から指輪を受け取り、大切そうに再び左手薬指にはめる姿に胸がギューッと締めつけられる。

 私のことを覚えてくれていたのも、私との結婚指輪をはめていたことにもびっくりだ。いろいろなことが一気に起こりすぎて頭が追いつかない。