契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない

「俺、鮎川ちゃんの素直なところすごく好きだよ。俺がもっと若かったらなぁ、迷わず鮎川ちゃんに求婚するのに」

 誰もが見惚れる甘い顔で言われると、冗談だとわかっていても胸が高鳴ってしまう。

「それは光栄です。だけど館野キャプテン、同じようなことを大勢の女性に言っているんじゃないんですか?」

 平静を装って言えば、館野キャプテンは「あ、バレちゃった?」と言う。

 社交的な一面からか、来る者拒まずのプレイボーイという噂も聞いていたけど、どうやら本当のようだ。

「言っておくけど俺は好きな人ができたら、一途だからね? それこそ真田のようにね」

 そう言って館野キャプテンは誠吾さんを見つめた。

「あいつね、奥さんが初恋なんだってさ」

「そう、なんですか」

 私と離婚した後に出会った奥さんが、誠吾さんの初めて好きになった人……。

 当然のことだ、私と誠吾さんは契約上の結婚だったわけだし、そこに愛はなかった。それなのに本当、どうしてこうも胸が痛むのかな。

 痛みは次第に増していき、苦しくなる。

「さて、と。そろそろ真田に助け舟を出してやるとするか。じゃ、鮎川ちゃん。今度また改めて誘うから一緒に呑みに行こうね」

「はい、よろしくお願いします」

 爽やかに手を挙げて館野キャプテンは囲まれている誠吾さんを助けに行った。