契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない

 テキパキと準備を進める先輩たちには到底及ばず、まだまだ勉強することがたくさんあるけど、CAになれて本当によかったって思える瞬間もたくさんある。

 たとえばドリンクサービスの際や到着後にお客様から「ありがとう」という言葉をもらえると、すごく嬉しい気持ちでいっぱいになる。

 それに大学在学中に英語はもちろん、完璧ではないけれど日常会話に困らない程度に韓国語や中国語やフランス語、スペイン語を取得したおかげでコミュニケーションの際にとても役立っている。

 とくにフランス語やスペイン語を話せるCAは少ないから接客を任されることもあり、大変だったけど勉強しておいてよかったと心から思う。

「今日の搭乗客リストの中に、スペイン国籍の方がビジネスクラスにいらっしゃいます。スペイン語を話せるのは鮎川さんのみなので、鮎川さんには今日はビジネスクラスのサービス業務をお願いします」

「はい、わかりました」

 ブリーフィング中に受けた注意事項をしっかりメモし、終了するとすぐに各自の持ち場へと向かいお客様の搭乗準備に取りかかる。

 ドリンクの確認をしていると、二歳上の先輩、金城(きんじょう)満里奈(まりな)がこちらに歩み寄ってきた。