契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない

「最悪だ」

 誠吾さんも頭を抱えている。

 結婚式を挙げてから一ヶ月後、私たちは一週間の休暇をもらってパリに新婚旅行へ旅立った。しかしまさかその機内でこんな仕打ちを受けるとは。

「だけど、まぁ。楽しんでこいっていうことだと思う」

「そうですね」

 それに機内はさっきのアナウンスのおかげで、だいぶ和やかになった。今日はとくに積乱雲が多くさっきから揺れている。

 お客様の緊張を解くためのものでもあるのだろう。

 少しずつ揺れも収まってきて、CAたちは機内サービスの準備に入る。これからが忙しい時に、こうして客の立場でのんびりさせてもらっているのが申し訳なくなる。

「なに? 働きたくなった?」

「そうかもしれません」

 つい周りに困ったお客様がいないか、見回してしまうし。

 正直に答えると、誠吾さんは「どれだけ真面目なんだ?」と言いながら笑った。

そして私がさっきから手にしているメモ紙を指差す。

「持ってきたんだ」

「はい」

 私が手にしていたのは、結婚式のご祝儀の中に入っていたメモ紙。どうやら誠吾さんが私たちの結婚式の日程を父にも連絡をしていたようで、父はこっそりと参列していたようだ。