契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない

 それからは怒涛の毎日だった。夏休み中に私と母は誠吾さんが用意してくれたマンションへ引っ越し、新しい生活をスタートさせた。

 父が探しにくることを考えて母は仕事を辞め、私も転入手続きを済ませた。そして誠吾さんは母にすべて包み隠さずに話した。

 私が自分を売ろうとしたことを知った母は泣きながら私に何度も「ごめんね」と謝った後、「二度としないと約束して」と怒られてしまった。

 助けてくれた誠吾さんには感謝の言葉を数えきれないほど伝えた。彼の前では申し入れを受け入れてくれた母だけれど、誠吾さんが帰ってから条件とはいえ、本当に結婚してもいいのか。無理していないかと私に聞いてきた。

 母は私が犠牲になってまで今の生活から抜け出すべきなのか、迷っているようだった。

 悩むことなんてない、新しい一歩を踏み出せれば私も母も幸せになれるのだから。母は私が後悔しないのなら私に任せる、誠吾さんにお世話になろうと最後には言ってくれた。