迷う理由なんてないよ、彼の手を取れば今の苦しい生活から母を救うことができるんだ。
「精いっぱいあなたの妻としての役割を果たします。……なのでどうかお母さんを助けてください、お願いします」
深々と頭を下げた。
この三年間、母ひとりにだけつらい思いをさせてきた。それが一生続くなんて耐えられない。母には幸せになってほしい。できるなら父も考えを改めて真面目に生きていってほしい。
私のこの決断がそのための一歩になってほしいよ。
様々な思いが込み上がり、涙が溢れそうになった時、大きな手が私の頭を優しく撫でた。
「あぁ、約束する。……凪咲たちを守るって」
「えっ?」
初めて名前を呼ばれ、心臓が飛び跳ねた。
びっくりして顔を上げれば、ふわりと笑った彼と目が合う。
「夫婦なんだから凪咲も俺のことを誠吾って呼ぶこと」
「え? あ……えっ?」
もう一度〝凪咲〟と呼ばれ、胸の奥がむず痒くなる。
なんでだろう、両親や友達には数えきれないほど〝凪咲〟と呼ばれてきたのに、彼に呼ばれただけで胸が苦しい。
こうして私と誠吾さんは期間限定の契約結婚を結ぶこととなった。
「精いっぱいあなたの妻としての役割を果たします。……なのでどうかお母さんを助けてください、お願いします」
深々と頭を下げた。
この三年間、母ひとりにだけつらい思いをさせてきた。それが一生続くなんて耐えられない。母には幸せになってほしい。できるなら父も考えを改めて真面目に生きていってほしい。
私のこの決断がそのための一歩になってほしいよ。
様々な思いが込み上がり、涙が溢れそうになった時、大きな手が私の頭を優しく撫でた。
「あぁ、約束する。……凪咲たちを守るって」
「えっ?」
初めて名前を呼ばれ、心臓が飛び跳ねた。
びっくりして顔を上げれば、ふわりと笑った彼と目が合う。
「夫婦なんだから凪咲も俺のことを誠吾って呼ぶこと」
「え? あ……えっ?」
もう一度〝凪咲〟と呼ばれ、胸の奥がむず痒くなる。
なんでだろう、両親や友達には数えきれないほど〝凪咲〟と呼ばれてきたのに、彼に呼ばれただけで胸が苦しい。
こうして私と誠吾さんは期間限定の契約結婚を結ぶこととなった。



