「ねぇ、あの子でしょ?」

「やばい父親がいるって子だよね」

「そうそう。少しでも仲良くなったら、お金を貸してほしいって言ってくるみたいだよ」

 噂が流れてから三日も経つと、いつの間にか話が大きくなって広がっていた。空港に着いて廊下を歩いているだけでこの言われよう。

「まったく、どうやったらあんなに話が大きくなるんだろう。凪咲、気にしちゃだめだからね!」

「うん」

 初めて噂を耳にした日はつらくて悔しくて悲しかったけど、今はどんなにひどいことを言われたって、こうして真琴がそばにいてくれるから平気。

 それに誠吾さんに父のためにも強くなるべきだと言われて、噂に振り回されていてはだめだと思った。

 最初は父のせいで会社に迷惑をかけてしまうかもしれないという罪悪感もあったけど、それは私が毅然とした態度で父と向き合えば防げることだということにも気づいた。

 誠吾さんがさっそく両親の離婚の際にお世話になった弁護士に聞いてくれて、証拠集めが必要だと言われた。