契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない

「って、えっ!?　女物の靴!?　どういうこと？　兄さん！　もしかして凪咲ちゃんが来ているの!?」

　騒がしい声を聞いて誠吾さんは深く息を吐いた。

「ごめん、弟の篤だ。覚えているか？」

「は、はい」

　もちろん覚えている。誠吾さんのおじい様を一緒に看取ったし、葬儀の時も顔を合わせていたもの。

　だけど、どうして篤さんは玄関の靴を見ただけで私が来ているってわかったんだろう。

　不思議に思っていると、リビングのドアの前で篤さんが叫んだ。

「兄さん、入ってもいい？　凪咲ちゃんに俺も会いたい」

「篤があぁ言ってるけど、部屋に入れてもいい？」

「もちろんです」

　そういえば誠吾さんから誘われていたよね、今度篤さんと三人で会わないかって。それなのに個人的な理由でずっと断り続けていたから申し訳ない。

「わかった」

　そう言うと誠吾さんは立ち上がり、ドアへと向かう。その間に彼に撫でられて乱れていた髪を整えて立ち上がる。

　誠吾さんがドアを開けたら、勢いよく篤さんが飛び込んできた。