契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない

「えっと、どういうことでしょうか?」

 混乱する私に彼は順を折って説明してくれた。

「父親が作った借金を清算し、法的な離婚手続きなどもこっちですべてやろう。それとキミと母親が安心して暮らせる場所も提供する。その代わり俺と結婚して余命半年の祖父に妻として会ってほしいんだ」

 あまりに奇想天外な話に一瞬フリーズしてしまう。

「もちろん祖父を安心させて見送った後は離婚する。その後も慰謝料としてキミと母親の暮らしを保障する」

「ちょ、ちょっと待ってください。いきなりすぎて話についていけません」

 いきなり結婚だなんて。それに……。

「なにより私にばかり都合が良すぎませんか?」

「そうか? 一時的とはいえ、法的にはキミは俺の妻になるんだ。むしろ俺が都合よすぎると思うんだけど」

「そんなことありません! だって借金はけっこうな額ですし、私とお母さんの生活も保障してくれて、両親の離婚の手続きまでしてくれるなんて……」

 私にしてみれば願ってもない申し出だ。

「そうですよ、あまりにいい話すぎます!」

 疑いめいた目を向けると、彼は目を瞬かせた後、「ブハッ」と噴き出して笑った。

「アハハッ……! しっかりと疑うことを学んだようだな」

「そ、そりゃ……。ですがさっきのことを抜きにしても、都合がよすぎて疑います! いったいいくらかかると思っているんですか?」

「うーん……そうだな。五千万くらいあれば足りるか?」

 五千万? 今、五千万って言った?

 そんな大金をポンと用意できちゃうようなすごい人なの?

 目を白黒させていると、彼は小首を傾げた。