契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない

「早く金を渡してくれよ」

「悪いけど、本当に渡せるお金がないの。……言ったでしょ? 今月は無理だって」

 すると父はなにかを閃いたようで私の肩を掴んだ。

「じゃあ給料が入ったら、俺の口座に振り込んでくれよ」

 名案だとばかりに声を弾ませて父は続ける。

「母さんに仕送りしている分も俺に回せ。今後、定期的に金が入ると父さん、すごく助かるよ」

 一方的に話を進める父に我慢できず、肩に触れられていた手を払いのけた。

「悪いけど、もうお父さんに貸すお金はないから。それに貸したお金もしっかりと返して」

 父はもう変わることなどできないだろう。もちろん幼い頃に育ててもらった恩義を多少は感じる。

 だけど誠吾さんのおかげで父は新たな職に就くことができた。それで充分でしょ? これ以上返す義理はない。ここで私が手を差し伸べ続けたら、もっと父はだめになる。

 その思いで言うと、途端に父の表情は険しさを増した。

「なんだと? お前は自分の父親を見捨てるつもりなのか?」

「どうしてそうなるの? 私はただ、前の真面目で優しいお父さんに戻ってほしいだけでっ……」

「うるさい!」

私の話など聞く耳を持たず、父は声を荒らげた。