契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない

「泣かせたいわけじゃないんだ。……ただ、もっと危機感を持ってほしいと思って言っただけだから」

「は、い。わかってます」

 本当に彼は優しい人だと思う。助けてくれただけではなく、私のためを思って怒ってくれたのだから。

「私がバカでした。お母さんを助けたい一心で深く考えずに動いちゃって……」

 彼の前で泣いたせいか気が緩み、これまで抱えていた思いを彼に吐き出してしまった。それを彼は口を挟むことなく最後まで聞いてくれた。

「なるほどな、考え直して逃げだした時に偶然俺が通りかかったわけだ」

「はい。……本当に助けていただいてありがとうございました」

 やっと涙も収まり、改めてお礼を言うとなぜか彼は顎に手を当てて考え込んでいた。

 つい気を緩めて思うがまま打ち明けてしまったけれど、赤の他人の彼にしてみれば、いい迷惑だったのでは? もしかして怒ってる?

 そんな不安がよぎってすぐに謝ろうとした時、急に彼は真剣な面持ちで口を開いた。

「なぁ、俺と取り引きしないか?」

「取り引きですか?」

 思わず聞き返した私に彼は大きく頷いた。

「あぁ、俺たちの人生をかけた大きな取り引きだ」

 人生をかけたなんて、大きなスケールの話に戸惑う。