契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない

　びっくりして見た彼は、二十代くらいのカッコいい男の人だった。まるでモデルのような容姿に息が詰まりそうになる中、彼は真剣な瞳を私に向けた。

「助けてやる。だから話を合わせろ」

「え？　あっ」

　彼はいきなり私の肩に腕を回すと、追いかけてきた男性と対峙した。

　身長は一八〇センチくらい？　それに比べて一六〇センチほどしかない男性には威圧的に見えるようでたじろいだ。

「な、なんだお前は！」

　明らかに動揺しながらも指差す男性に、名前も知らない彼は鋭い眼差しを向けた。

「俺の凪咲を追いかけ回すあなたこそ誰ですか？」

「俺の凪咲って……」

　困惑する男性に対し、彼はすぐに言った。

「凪咲は俺の彼女です。馴れ馴れしく〝凪咲ちゃん〟なんて呼ぶなんて、どういうことですか？」

「ひっ……！　ちがっ……！　言っておくけど、そっちから誘ってきたんだからな！」

　そう言うと男性は背を向け、転びそうになりながら逃げだした。

　見ず知らずの私のことを助けてくれたんだよね？

　ホテルに連れ込まれずに済んでホッと安心したのと同時に、この人が助けてくれなかったことを考えると恐怖が襲ってきて足に力が入らなくなる。

「っと、大丈夫か？」

　すぐに彼は私の身体を支えてくれた。