契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない

「第一食事だけで三万なんて払うやつがいるわけないでしょ? だけど安心して。凪咲ちゃんのためにとびっきりいい部屋を用意してあげたから。そこでたくさん可愛がってあげる」

 やだ、怖い。今すぐに逃げ出したい。

 それなのに身体に力が入らず、声も出すことができない。初めて知った。人は恐怖に陥るとこうなるんだって。

 男性の歩くスピードは速くなり、逃げる術を失っていく。
 どうしよう、このままじゃ私っ……!

 ギュッと目を閉じた時、母の顔が頭をよぎる。

 早くお金を貯めることができれば、これ以上母につらい思いをさせる必要もなくなる。私が少し我慢すればいいだけ。

 好きな人なんていないし、いつかは誰かに初めてを捧げるもの。それが母を助けるためだっていいじゃない。それに今の状況では逃げることもできないもの。

 安易にお金を得るために行動に移した自分の責任だ。
 だったら男性の要求を受け入れて、お金をもらわないといけない。

 腹を括った私に気づいたのか、男性は私の腰に回している腕の力を緩めた。

「部屋に用意をお願いしてある食事もね、おいしいものを注文したから楽しみにしてて」

上機嫌の男性とともに歩くこと数分、都内でも有名なホテルが近づいてきた。