大好きな飛行機に乗って、世界中を飛び回りたいという夢を叶えるために幾多の困難を乗り越えてきた。

 やっと……やっと夢が叶い、CAとしての第一歩を踏み出した記念すべき日にこんな再会ってありえる?

 期待を胸に挑んだフライト前の、コックピットクルーとのブリーフィング中、四十歳になる機長の館野(たての)一茂(かずしげ)の挨拶から始まった。

 続いて副操縦士である彼が口を開いたわけだけれど……。

「副操縦士の真田(さなだ)誠吾(せいご)です。今日、初フライトとなるクルーがいると伺いました。どうか素敵な門出となるよう、館野キャプテンと願っております」

 そう言って彼が微笑んだだけで、先輩CAたちは完全に目がハート状態。それもそのはず。一八五センチの長身に爽やかな黒の短髪。切れ長で目力が強く、ちょっぴり怖い印象を持つが、さっきのように微笑んだり笑ったりすると口角が上がって柔らかい表情になる。

 学生時代はバスケットをしていたようで、身体が引き締まっておりパイロットの制服がよりいっそう似合う。

 二十九歳でちょっぴり幼さを残しつつ、落ち着いた大人の雰囲気もある彼は〝パイロットの王子様〟と呼ばれているらしい。