睫毛の長いその目元に高い鼻筋。

ふわふわの黒髪は日向君が動く度に踊っているようで見ていて飽きない。

血色のよい唇は笑うと綺麗な弧を描く。

肌は健康的な小麦色だったのに今は少し白い。



いずれにしても相変わらず彼は格好いい。



「何しにきたの?」



高鳴る心臓を必死で押えれば、可愛くない返事をしてしまう。



「美玲に会いに来た」

「っ、だから何のために?」

「もう一度美玲と付き合うために」

「なっ!?」



真剣な顔で頬を赤く染めて言ったところで私は絶対騙されない。

前から日向君は人のために自分が辛い時も普通に笑うような、そんな噓つきだった。

じゃあこの噓は誰のためなんだろうって一瞬思ったけど、私はもう傷つきたくなんてない。



「日向君のことはもう好きなんかじゃない」



声は震えて無かっただろうか。



「うん、そうだよな。それでもいい。もう一度好きにさせてみせるから」

「好きにさせるってもう卒業まで一ヶ月もないよ」

「問題ない」



あまりにも自信満々に答えるから、溜息が漏れた。



「何を根拠に言ってるの?」

「うーん、色々あるけど」

「色々って」



心当たりがありすぎて、咳払いをして自分を落ち着かせる。

自分がどんな表情をしてるか今すぐに鏡で見たい。

感情が顔に出にくいってよく言われるし大丈夫なはず。



「一つは美玲がまだ俺を名前で呼んでくれたことかな」



にやりと笑った日向君にしまったって思う。



「……ただの癖だよ」

「それでも嬉しかった」



そう言ってくしゃりと笑う日向君に言いたいことをぐっと飲み込む。



「帰ろう。送ってく」



日向君には不思議な引力がある。

だから断れなかっただけだ。

私は彼に怒っているのだから。