不良もののやつ



男は私を物珍しそうにまじまじと見つめる。

視線を感じながらも、私は動こうとする気力が湧かなかった。

「……なんですか?」


「いや、お前俺に抱かれたいんじゃないの?」

「まあ…はい……」

「....変な奴」

少し何か考えているように、男は目線を落とす。

「こっち来れば?」

その言葉に引かれたように、ぎこちなく一歩踏み出し、男の隣に腰掛ける。

「名前は」

「はい?」

「名前、教えろ」


名前なんてまさか聞かれるとは思わなかった。
今まで名前は、聞かれたとしたら、誠実そうに見せといて、警戒心をなくすためだとか、
彼氏面したいためだいうことしかなかったから。

この人は、何か違う。