ちょっとだけ嬉しさも心に残った。


チラッと花小の方を見てみると顔を赤くして恥ずかしそうにうつむいていた。


可愛い過ぎだろ………っ

もはや可愛いで収まりきらない。


あぁ、早く俺の上着が花小の匂いで埋め尽くされてほしい。


なんて気持ち悪いことを考えていると後ろから車が猛スピードでやって来た。


「花小。そっち危ない。」


花小は車道側を歩いている。


肩を軽く触れて歩道側に寄せる。

花小は戸惑いながらも受け入れてくれた。


俺は車道側に立ち、また歩き始める。


「あ、ありがと……う……」


そう言う花小の顔は真っ赤。


こんなことでそんなに可愛い表情してくれんのかよ…………

ボーナスタイムか……………?


自然と顔が赤くなる。

すると花小がこっちを見た。


「………っ!こ、こっち見ないで。」


焦りながらもそう言う。

すると花小は黙り込んだ。


さすがに感じ悪かった…………か?

そう思いまたもや花小の方を見る。


その瞬間俺の心は“可愛い”で埋まった。


毎回毎回、花小には可愛い過ぎて困る。

それを覆せるような感覚だった。


今すぐ襲いたい。


そんな暴走寸前の心を何とかしてなくそうとする。


そのせいか残りの道のりはあっという間だった。


「ばいばい。」

結局、襲えなかった。


そんな事実が俺の頭をぐるぐると巡っている。


「じゃあ、また明日。」

気付けばそう言っていた。


やっぱり花小との別れは慣れない。

どうしても離したくないという気持ちを押され切れそうにないからだ。

後ろを振り返ってまた歩く。

「し、織くんっ!」


そんな可愛い花小の声が俺を呼び止めた。


「なに?どうしたの?」


本当は花小に呼ばれて心臓がバックバク。


もはやパンク状態に陥っていた。


花小は何だか困っている様子。


すると花小は投げやりな感じでこちらに駆け寄ってきた。


なんだ?忘れ物でもしたのか?


そんなことを想像していた俺がバカだった。


チュッ。


そんな可愛いらしい音をたてて柔らかい感触が頬に伝わった。


「ご、ごめん………それじゃ!」


そう言い残し、花小は家の中に入っていった。


俺は一人、ぽつんと道に立っている。


「は………?今、花小……………っ」

“キス”というのを理解するのにはとても時間が必要だった。


今、花小は俺に………………。


そう考えるだけで何もかも弾けそうに、壊れそうになる。


頬を優しく触る。

まだ何かが残っているような感じ。


「花小……………。」


小さく呟くと俺はとても深いため息をついた。



俺の彼女は、世界で一番可愛くて、世界一番俺を困らせる。