春に笑って、君宿り。

「……!!」


それが何なのか分かった瞬間、体は勝手に走り出していた。


「大丈夫!?」

「!?」


急に声をかけられたその男の子は視線を私の方へ移す。


「掴まって!!」


そして、私の伸ばした手に迷うことなく掴まった。
これが初めて触れた男の子の手の感触。
なんてこと、このときは考える余裕もなかったわけで。


男の子の手をぐっと引っ張り、無事に川岸についた。
……途端、一気に重みが消えて。


「っ!?」

「わあっ!?」


私はその場に尻餅をついた。
男の子は少しだけよろめいてから、片膝をつく。

大事に抱えているそれを守るみたいにぎゅっとだきしめて。


「はー……よかった……」


男の子の腕の中からひょっこり顔を出す子犬を見て、つい笑みがこぼれた。

たぶん、この子を助けようとしてたんだよね?