春に笑って、君宿り。

「遊園地、の時」


私がお化け屋敷から出たとき。
乃奈香ちゃんと楽しそうに話してたよね。

人に対して壁を作ってる君が、いろんな人と関わるのはすごく喜ばしいことだと思うし。
このまま雪杜くんのいいところ、みんなに知って欲しいって。

……ちょっとだけ思ってる、よ。


「楽しそうだった」

「え、いつ」

「……乃奈香ちゃんと話してるとき」

「……?」


必死に思い出そうとしてる。
それくらい君の中では濃く残っていない証拠。
それだけで少し安心するんだから、よっぽど単純だ。


「もしかして、あんたがお化けみたいな顔してお化け屋敷から出てきたときの話?」

「半分だけ当たってる。お化けみたいな顔はしてないもん!!」

「ふ、はは」

「……」


もう、いくら雪杜くんの最強スマイルだって、今の私の機嫌を直すには……


「あのときのあんたの顔、思い出したら、ふは、笑えてきた……」


……こうかはばつぐんだ。


「も、もう!! 乙女の顔を思い出して笑うなんて、失礼だよっ」


そうだ、今私は怒ってるんだよ!!